コラム

“ジブリ作品から学ぶ働く価値観” – 価値観を尊重し、成長を促進する働き方を考察

公開日:2024年04月05日 更新日:2024年04月05日

今回は、「”ジブリ作品から学ぶ働く価値観” – 価値観を尊重し、成長を促進する働き方を考察」と題してコラムをお届けします。ジブリ作品は、子どもの頃からファンで今でも繰り返し見ているという方や、一方で、「一度も縁がなくて見たことない。」「どうせ、子ども向けの作品でしょう?」という方もいらっしゃると思います。尚、筆者も30代になるまで一度も通しで見たことがなかったタイプです。
ジブリ作品は、自然や人間関係、家族、友情、勇気、愛、そして成長に関するテーマを扱っています。これらのテーマは、ビジネスにも適用できるのではないでしょうか。今回は2001年に公開となった「千と千尋の神隠し」を題材に、「働く」ということに焦点を当てて、ジブリ作品におけるメッセージ性を考察し、おすすめのポイントを紹介したいと思います。

✦STORY

千尋(ちひろ)は両親と一緒に新しい家に引っ越す途中、不思議なトンネルをくぐって神々の世界に迷い込んでしまいます。そこでは、人間は豚にされてしまうという恐ろしい掟があります。千尋は両親が豚にされてしまったことに気づき、恐怖に慄きますが、その世界で出会った白い龍の姿をした少年ハクに助けられます。ハクは千尋に湯屋で働くように言い、名前を千尋から千に変えられてしまいます。

千は湯屋の主人である魔女 湯婆婆に仕えながら、両親を元に戻す方法を探します。その過程で、千は様々な神々や妖怪たちと出会い、友情や愛情を育みます。千はハクがかつて川の神であったことを思い出し、ハクの名前と記憶を取り戻します。そして、千は湯婆婆との約束を果たし、両親と一緒に元の世界に帰るまでを、描いた長編アニメーション映画です。

✦理不尽な大人への対応

© 2005-2023 STUDIO GHIBLI Inc.

小学校を転向することになる千尋。「初めてもらった花束が、お別れの花束なんて悲しい…」と、とても物憂い心になって車に揺られている。後部座席で、大事に大事に花束を握りしめるあまり、想いとは裏腹に花は萎れてしまいます。その直後、父親は娘の想いに寄り添うこともなく自分勝手に道に迷い、「この先もきっと繋がっているだろう」と猪突猛進とばかりに車を暴走させ、車が侵入できないトンネルにたどり着く。以前も迷ったことがあったが、カンと経験で突っ走るタイプの大人。「ねぇ、お父さん戻ろうよ」と千尋の嘆きの声も掻き消してしまいます。理不尽極まりない。

さて、このシーンをビジネスに置き換えてみましょう。

社会で働いていると突如生まれる「理不尽」だなぁ…と思うことが時々あると思います。まず、理不尽な人の特徴を理解することが重要です。

  1. 余計なひと言が多い: 余計な発言をする人は、しばしば理不尽な行動をとります。注意が必要です。
  2. 機嫌が悪いと態度が変わる: 感情の起伏が激しい人は、理不尽な行動をとることがあります。彼らの態度には注意が必要です。
  3. 言うことがよく変わる: 一貫性のない発言をする人は、理不尽な要求を押し付けてくることがあります。こうした状況には耐えるのは難しいですね。
  4. 自分が悪くても、人のせいにする: 責任を他人に押し付ける人は、理不尽な行動をとることがあります。

理不尽な人に対してどう対処すべきかは個々の状況によりますが、以下のアプローチを試してみてください。

  1. 冷静になる: 怒りや感情に流されず、冷静に対処しましょう。
  2. 相手の話を最後まで聞く: 理解を深めるために、相手の意見をしっかり聞いてみましょう。
  3. 真に受けないようにする: 理不尽な発言に振り回されないようにしましょう。
  4. 気持ちを切り替える: ビジネスだと割り切る。自分の心身の健康を守るために、適切な距離を保ちましょう。
  5. 相手にしない: 無駄なエネルギーを使わず、理不尽な人には無理に対応しないという選択肢も想定に入れましょう。

最終的には、自分の成長と健康を優先し、適切な対処法を選ぶことが大切です。抱えきれなくなる前に上司や先輩に相談しましょう!

✦金(きん)に見向きもしない千尋



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映画の中では、金(きん)の粒欲しさに群がる労働者たちが描写されています。カオナシは、千尋の前でも大量の金(きん)を出して見せる。その前に他の労働者たちに金(きん)を与えて、とても喜んでくれたから、きっと千尋も喜んでくれるだろうと渡したのだが・・・「欲しくない、いらない」という千尋。それに対して、ヨミが外れて悲しそうなカオナシ。
自分はみんなが欲しい、価値があるものを持っているつもりでいたけど、実際は千尋には要らないって言われて、やるせない虚無感に襲われる。そんな千尋の態度が気に入らなくて、怒ってしまったりもするけど、残るのはやはり虚しさだけ。ここでのカオナシの判断を考察すると、「アンコンシャスバイアス」が影響している可能性があります。

✦アンコンシャスバイアスとは

アンコンシャスバイアスは、自分でも気づかないうちに潜在的に持っている先入観や偏ったものの見方・考え方を指します。これは文化、教育、経験などによって形成され、人々が無意識に持つ思い込みです。職場や日常生活において、アンコンシャスバイアスが意思決定に与える影響は大きく、多様性や平等を促進するために意識的な取り組みが求められています。特に日本では、性的役割に関するアンコンシャスバイアスが職場にも多く潜んでいると言われています。

アンコンシャスバイアスに気づき、考え、行動を変えていくために、個人や組織ができることを模索しましょう。

✦働いて得られる「対価」とは?


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次に、千尋が働くことになった理由を考察してみましょう。千と千尋の神隠しのなかで、千尋が働くことになったのは、以下の理由があります。

– 両親と一緒に神々の世界に迷い込んでしまうが、その世界では人間は豚にされてしまうという掟があったこと
– 豚にされた両親を助けるために、その世界で生き延びる必要があったこと
– 謎の少年ハクに助けられ、彼に言われた通り、湯屋の主人である魔女湯婆婆に仕事を探すように言われたこと
– 湯婆婆は「働きたい者には仕事をやる」という誓いを立てていたため、千尋がしつこく頼み込むと、仕事を与えることにしたこと
– しかし、湯婆婆は千尋の名前を奪い、千と名乗らせることで、千尋の記憶や自我を奪おうとしたこと
– 名前を奪われたことで、元の世界に戻れなくなる危険にさらされた
– 名前を忘れないように努力しながら、湯屋で働くことで、自分の存在を守り、両親を助ける方法を探した

以上のように、千尋が働くことになったのは、自分と両親の命を守るためでした。だから、金(きん)の粒には見向きもしなかったんですね。

✦チームで働くメンバーの価値観を尊重しましょう

本稿で考察した千尋の働く理由は実社会でも十分働く理由の一つになると思います。人によって、働くことの交換で得られるものは、給与などの金銭報酬が一番という人もいれば、非金銭報酬である「勤務場所」、「仕事の裁量度」、「やりがい」や「休暇の取りやすさ」という人もおり、価値観は様々です。価値観は、これまでのキャリア(足跡)で形成されるものなので、正解はありません。

部下やチームのメンバーが非金銭報酬を重視する価値観を持っている場合、以下のアプローチを検討してみてはいかがでしょうか。

  1. 認識と理解: 価値観を理解しましょう。なぜ非金銭報酬を大切にしているのか、その背後にある動機や価値観を尊重して聞き出してください。
  2. フレキシブルな報酬: 非金銭報酬を提供する際に、個々の好みや興味に合わせて選択肢を提供しましょう。例えば、特定のプロジェクトへの参加、スキル向上の機会、リモートワーク、感謝の言葉なども有効です。
  3. 感謝と認識: 部下が成果を上げた際には、感謝の意を示しましょう。公的に表彰する、個別に感謝のメッセージを送る、チームミーティングで部下の功績を共有するなどの方法があります。一方で、全員の前で称えることが「晒されている」と感じる人もいるので注意が必要です。
  4. 成長と挑戦: 部下や同僚に成長の機会を提供し、新しいスキルを身につける機会を与えましょう。彼らが興味を持つプロジェクトやタスクに挑戦させ、自己成長を促進します。
  5. 透明性とコミュニケーション: 非金銭報酬の提供基準やプロセスを明確に伝え、透明性を保ちましょう。定期的なフィードバックやコミュニケーションを通じて、彼らのニーズや希望を把握しましょう。

最も重要なのは、部下がいずれのパターンであったにせよ、大切なことは部下の価値観を尊重し、彼らがモチベーションを保って成果を出せるようにサポートすることです。
自らが志向する対価に向けて仕事をするとき、人は如実な成果や成長を遂げることが多いと感じたことはありませんか?その環境を創り出して気付かせてあげることで、個人の成長⇒チームの成果⇒会社の向上を実現させましょう。

著者:シャープファイナンス(株)プラットフォーム事業推進室

提供:ⒸイツトナLIVES/シャープファイナンス

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