コラム
2025/07/04
〈新NISA〉スタートから1年半でどうなった? いまから始めても大丈夫?【元証券マンのFPが解説】
公開日:2025年07月04日 更新日:2025年07月04日
※画像はイメージです/PIXTA
NISA制度の刷新から1年半。口座数は大きく増加し、20代を含む若い世代にも広がりを見せました。一方で、始めそびれたまま「今さら遅いのでは?」「この世界情勢で大丈夫?」と足踏みしている人も多いはずです。でも実は、この1年半に起きた相場の乱高下こそが “投資で本当に大切なこと”を教えてくれた期間だったともいえます。
その理由と振り返りを、元証券マンで現在は金融経済教育推進機構の講師としても活躍する倉橋孝博CFPが、新NISAの現状とともに解説します。
■制度開始から1年半経ってみえてきた「投資との向き合い方」
新NISAが始まった2024年、口座数は前年比で約522万増加し、2,647万口座に。特に20代以下の口座開設率が高く、収入300万円未満の層でも広がりを見せました。
日本証券業協会の調査(※)では「新NISA」が始まった2024年に口座開設した人の割合が全体の17.2%にのぼり、2014年(NISA制度開始当初)の15.1%を2.1ポイント上回り最多となりました。
※ 日本証券業協会「新NISA開始1年後の利用動向に関する調査 (調査結果概要)」2025年5月公表
金融庁の速報値では、2024年中にNISA口座で新規買い付けを行った額は約17.4兆円と発表されています。内訳は「成長投資枠」で約12.4兆円、「つみたて投資枠」で約5兆円です。これらの資金は少なからず株式市場の上昇に寄与し、日経平均株価は2024年7月11日に4万2,426円の史上最高値を更新することとなりました。
順風満帆な滑り出しと思われましたが、相場は決して一本調子ではありません。トランプ大統領復帰後の急な関税発表や、日銀の金利引き上げなどで日経平均株価は急落。特に2024年8月5日には4,451円安と過去最大の下落幅を記録し、市場は一時的な混乱に包まれました。中長期投資の重要性がうたわれるNISA口座ですが、新規参入者の多いタイミングの暴落であり、メディアをはじめ心配の声が多く上がりました。
冷静な対応をした、個人投資家たち
ところが、NISA口座での売却は限定的でした。2024年にNISAで1銘柄も売却していない人の割合は、つみたて投資枠で83.2%、成長投資枠で75.3%という結果になりました(日本証券業協会調べ)。つまり投資家は概ね冷静に対応できていたのです。いずれの急落後も株価はある程度回復しており、中長期投資の優位性を実感できたのではないでしょうか。
現在のマーケットはトランプ氏の朝令暮改な発言や、不安定化する中東情勢の影響もあり乱高下を繰り返していますが、株式投資の空中戦を演じる必要はありません。それらは景気循環の1サイクルと捉え、10~20年先を見据えた資産運用をすることが大切です。この1年半は “市場は揺れるもの”という現実を知ると同時に、動じず構えることの大切さを多くの人が体感した時間でもあったのです。
「もっと早くNISAを始めておけば」「今始める意味はあるの?」そんな声を聞くこともあります。
2014年のNISA制度開始から11年余り、新NISAはまだ1年半。「投資」と聞くと難しそうに感じるかもしれませんが、新NISAは長期・少額・分散を前提に設計された制度。制度が恒久化されたこともあり、20~40代の方ならこれから30年以上使い続けられます。中長期投資であればあるほど成果が期待できるNISA。始めるのに遅いということはありません、大切なのは“続けること・慌てないこと”です。
■ 今から始めても大丈夫? 仕組みはシンプル、焦らなくて大丈夫!
新NISAの主なポイントは次の3つだけ覚えておけば十分です。
・投資利益が非課税(通常は約20%課税)
・「つみたて投資枠」(年間120万円)と「成長投資枠」(年間240万円)がある
・少額(毎月100円~)で始められる
「成長投資枠」は投資信託の他にも株を購入でき、年間240万円までの投資が可能です。240万円を1度に使い切ることも、数回に分けての購入もできます。また「つみたて投資枠」のように定期的に買い続けることもできます。
なによりNISA最大のポイントは、投資信託や株から得られる分配金や配当金、売却益が非課税であることです。投資信託から1万円の分配金が支払われた場合、通常約2,000円差し引かれる税金が、NISAであればかかりません。株で100万円儲かって売却しても、約20万円の税金が非課税となります。
株の運用をプロにおまかせ?「投資信託」の仕組み
NISAの主な利用先となるのが「投資信託」。多くの投資家から集めた資金(数兆円を超えるものもあります)を、専門家(ファンドマネージャー)が株や債券などで運用してくれる金融商品です。
単に「ファンド」と呼ばれることもあり、現在、その数は約5,600本にのぼります。
「この投資信託は先進国の株で、こちらは新興国の債券で、さらにこっちは日本の株と債券がミックスされて」と、人間の性格が1人ひとり異なるように、投資信託も各商品がさまざまな特徴を有しています。
「プロにおまかせ」できるのも魅力ですが、それ以上に投資を通じて自分のお金が社会のどこに関わっているのかを意識することは、人生を豊かにするでしょう。海外の選挙結果や戦争、円安・円高がなぜ話題になるのか。日々の経済ニュースが “自分ごと”となり、ただの数字ではなくなるはずです。
■草花を育てるように…投資の神様と新NISA
投資の神様と呼ばれるウォーレン・バフェット氏が、今年5月に94歳で引退しました。彼の60年以上の投資人生では、幾度も大きな暴落や危機があり、それでも一貫して変わらなかったのは「長期・継続」の姿勢です。
「10年保有する気がないなら、10分でも考えるな」という名言が端的にそれを表しています。
新NISAという仕組みは、そうした投資の基本に忠実な制度設計でもあります。それを理解し、株価の波に一喜一憂するのではなく、草花を愛で育てるように日々少しずつ資産を育てていく心持であれば、NISAはあなたの人生を応援してくれる優れた仕組みであり続けるでしょう。
※本稿は特定の投資商品を推奨するものではなく、あくまで判断の参考情報です。ご自身の生活スタイルやリスク許容度に応じて、信頼できる金融機関・専門家と相談のうえご検討ください。
著者:倉橋 孝博 株式会社くらはしFP事務所
(編集:幻冬舎ゴールドオンライン)
提供:ⒸイツトナLIVES/シャープファイナンス
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