コラム

青春18きっぷ、変わる旅のかたち ― 新しい制度を楽しみ、新しい旅へ出よう

公開日:2025年09月26日 更新日:2025年09月26日

「青春18きっぷ」と聞いて、かつての長い休みや鉄路の旅を思い出す人も多いのではないでしょうか。2024年冬、制度は大きく変わり、かつての「18きっぷならでは」の技は一部使えなくなりました。
それでも変わらぬ使い方は残り、そして新しい仕組みの中だからこそ生まれる旅もあります。若いころの記憶を呼び覚ます人にも、これから初めて手に取る人にも──「自由な旅」を誘うきっぷであることに変わりはありません。
新しくなった青春18きっぷ、その楽しみ方を解説します。


1. かつての使い方と“旅人の知恵”

青春18きっぷは、ただの乗車券ではありませんでした。
誰もが「乗客」から「旅人」になり、自分の力で世界を広げられる“通行証”、限られた予算の中で得られる「自由な旅」の象徴でした。
古くは国鉄時代から、親子の世代も超えて蓄積された「18きっぷでの旅の知恵」が引き継がれ、その知恵で鉄路の旅は無数の唯一無二の旅の経験を生み出してきました。

旅人たちはダイヤを読み込み、乗り継ぎを駆使して、1日で数百キロを移動する猛者もいました。東京から始発出発組の大垣駅ダッシュ、北は津軽半島の果て、西は新山口駅。
5日分のきっぷをふたりで一泊二日、そして残り1日分をひとり日帰りの旅に。日付変更から出発して日帰り一泊旅行5回に使うなども定番。自由度は無限、若者だけでなく自由な旅を求める人にとって、18きっぷはまさに「旅券」以上のものでした。
そしてその一部は確かに、今回の改変で過去のものになりました。


2. 制度変更のポイント(新旧比較表)

以下の表は、青春18きっぷの旧制度と新制度の違いをまとめたものです。

変更点 旧制度 新制度
利用の柔軟性 非連続使用可能。5回分を日付・人数で自由に分けて使えた 連続使用必須。3日間・5日間の連続利用のみ
1枚の利用人数 最大5人まで同時利用可能 1枚につき1人のみ利用可能
有効期間 有効期間内の任意の5日間 購入日から連続する3日または5日間
自動改札対応 非対応。有人改札での確認が必要 自動改札で通過可能に
北海道新幹線オプション券 2,490円奥津軽いまべつ~木古内) 4,650円新青森~木古内に拡大)

これまでの使い方と一番大きく変わったのは、期間内なら任意の1日単位で使えた切符が購入時に指定の3日または5日の連続使用のみに限定されたことでしょう。「5日も連続で休みなんか取れない」「連日移動をしないと損になる?」など嘆く声が大きかった部分です。また1枚につきひとりの利用とされたことで、5日分を5人で日帰りに、2人で一泊旅行とひとりで日帰り、などができなくなり、働く世代や家族旅行での利用の融通が利かなくなった点も惜しまれます。代替として、5日券のほかに3日券が用意されたものの利用の自由度は明らかに損なわれてしまったと言えます。
連続する日程のために必要となる宿泊費用、また出発後に天候や災害で予定の交通機関が使用できなくなった場合にも期間の延長ができないことがリスクとなる点も注意したいところです。
では、新たな制度で追加となった利点や、引き続き残されている使い勝手も見てみましょう。
たとえば「終電までの利用ルール」。これまでは地域ごとに扱いが異なり、慣れない利用者には分かりにくい部分もありましたが、新制度では全国で統一されました。深夜の時間をどう使うか――その工夫次第で、旅の行動範囲は広がります。


3. 終電までの利用に関する新旧制度比較

青春18きっぷは2024年冬から「終電まで利用可能」全国でルールが統一されました。これにより深夜発・着の列車にも乗れるようになり、夜間帯の自由度が広がりました。

変更点 旧制度 新制度
終電の扱い 日付が変わる乗車中でも利用不可に/日付超過以降の運賃が別途必要 終電まで有効。0時を過ぎても終着駅まで利用可能
例外駅 東京・大阪近郊の特定駅では乗車中であれば降車駅まで有効 全国一律で終電まで利用可能
0時越え旅程 日付またぎの旅程は不可。(別途運賃が必要) 日付またぎの旅程が可能。夜行列車や深夜移動に対応

従来は地域ごとに「0時を過ぎたらどう扱うか」がまちまちで、利用者には分かりにくい点もありましたが、シンプルに「その日の終電まで有効」と覚えておけば大丈夫です。
夜行快速が廃止された今、翌朝まで走り続ける列車はほぼありません。なので深夜に長距離を稼ぐことはできませんが、出発時は0時台・1時台まで走る列車に乗って目的地に近づいておくことが、帰着時は終電でなら日付を気にしない移動ができます。ガッツリ移動をするなら、深夜着駅からの長距離バスと繋ぐ方法もあります。


4. 新制度でできる旅の形

連続利用になったことで、「余った日を後で使う」といった自由はなくなりました。そこで大切なのは考え方の転換です。3日間・5日間という「まとまった時間」をどうフルに使うかを楽しんで組み立てる――そこに、新制度ならではの旅の面白さがあります。
また「終電まで利用可能」という統一ルールを活かせば、前夜の終電でできるだけ距離を稼ぎ、翌朝から現地で活動するという時間配分が現実的になります

金曜夜から出発、週末フル活用
新制度では、利用開始前夜の終電から動き始められる点が強みです。木曜深夜~金曜未明に出発して土曜・日曜を丸ごと観光に当て、日曜夜〜月曜未明にかけて帰途につく「週末フル活用プラン」が現実的になりました。仕事を抱える会社員でも「出発日を前夜に前倒す」ことで、旅の時間を大きく伸ばせます。
“中継地”に泊まっての日帰り小旅行
例えば初日から仙台を拠点にして、2日目は岩手青森や秋田山形へ日帰り旅、3日目は仙台の街をのんびり過ごす。あるいは敦賀や米原を拠点に、紀伊半島や京丹後、北陸を日帰り。最終日は、日本海経由か太平洋経由での帰り道…「連続だからこそ、拠点を置いた上で周辺をめぐる旅」は、遠くばかりを目指すのではなく、普段と違う出発点からの旅として新鮮です。
途中下車で温泉めぐり
鈍行ならではの旅の楽しみが「途中下車」。東海道本線なら熱海や大垣、東北なら鳴子や飯坂といった温泉地に立ち寄りながら、少しずつ前に進む。残り時間によって帰りは一気に戻っても良し。
以前からある楽しみ方ですが、3日や5日の時間の中で気になる場所に遠慮なく立ち寄る贅沢な旅の仕方に振りきる。メリハリのある日程設計が、連続利用の利点を最大化します。


東京、大阪発で主な方面別に週末利用3日券「どこまで行けるか」のアイデアと、具体的に実現可能なモデルプランを提案します。
※出発時の日付またぎは日付変更までの運賃を降車駅で精算(例:上野発23:45は大宮まで運賃発生)

出発地 方面別アイデア モデルプラン
大阪発(3日券) 四国方面:岡山経由で高松で昼うどん、松山泊。八幡浜経由高知泊またはフェリーで広島に移動して中国地方泊で、最終日それぞれ立ち寄りしつつ帰阪
九州方面下関泊から、翌日熊本や佐賀泊。最終日小倉立ち寄りで帰阪
紀伊・伊勢方面:和歌山から南紀、新宮を回り、伊勢泊飛騨または北陸方面に2日目の宿を求め、最終日は京都など経由で戻るルート(※モデルプラン)。
紀伊・伊勢方面プラン(→飛騨高山/越前ルート)
大阪駅 23:22発→阪和線鳳から18きっぷ利用開始→和歌山泊 → 翌朝出発、串本でまぐろや海、または新宮で熊野の山を感じながら昼食・散策 → 伊勢泊 → 2日目は伊勢を観光のち、日本海に出て敦賀起点に越前泊、または岐阜から下呂温泉経由で飛騨高山泊。最終日は、敦賀から城崎温泉まで足を延ばすか、京都経由で大阪へと、体力気力次第でどうぞ
東京発(3日券) 長野方面:中央線で松本・長野市を拠点に中津川など木曽山脈方面。または白馬村などを日帰りし日本アルプス堪能。
東海道方面浜松や名古屋を経由して、大垣・米原を拠点に内陸や北陸へ。
北陸方面高崎・長岡を経て、新潟や富山方面へ。
東北方面庄内仙台、さらに福島まで広がるルート(※モデルプラン)や、盛岡、青森方面に北上するルートも
東北ぐるりプラン
上野駅 23:40発 → 大宮から18きっぷ利用開始 → 熊谷泊 → 翌朝 越後湯沢で温泉&昼食 → 新潟経由で日本海を観ながら庄内(あつみ温泉、鶴岡など)泊
2日目は天童駅(将棋の街散策)や、作並駅(宮城峡蒸留所見学)立ち寄り → 仙台または鳴子温泉泊。最終日は仙台や福島に寄り道しつつ東京へ(直行で約7時間強なので、体力や予定と相談しながら調整を)

旅の意欲をかき立てる、変わらぬ旅のきっぷ
三日連続で使う今回のきっぷを最大限に生かすには、どうしても「ひとつの街に腰を落ち着ける」というよりも、毎日ある程度の移動を挟む旅程になります。けれども、その道すがらで出会った景色や人に心惹かれたなら、次の旅はそこを目的地に据えてみるのもいいでしょう。新しい場所との出会いも、何度も通いたくなる街に出会うことも、青春18きっぷの旅ならではの醍醐味です。
「かつての18きっぷ」は、変わってしまったのは事実です。誰かにとってはそれが「改悪」であり、寂しさを伴うでしょう。しかし、列車の窓外に流れる景色、途中下車して見つける小さな商店、飲んだ酒の味——そうした「旅の核」は消えていません。制度は変わっても、旅に求めるものは自分で見つけられます。今回の記事が、皆さんの次の小さな冒険のきっかけになれば幸いです。

※2025年冬期の「青春18きっぷ」は9月26日時点で未発表、例年どおりであれば10月下旬ごろに告知となります

提供:ⒸイツトナLIVES/シャープファイナンス

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