コラム
2025/06/20
日本の魅力を再発見する、ウイスキー蒸留所の旅
公開日:2025年06月20日 更新日:2025年06月20日
「ジャパニーズウイスキー」として国際的な評価が高まり続ける国産ウイスキー。
しかし生産国・日本に住む私たちだからこその楽しみ方があります! 全国に点在する小規模で独立系のクラフト蒸溜所では、土地の風土や素材を生かした個性豊かなウイスキーが今日も生まれ続け、大手メーカー系の蒸溜所も地域の顔として長年親しまれ革新を重ねています。繊細で個性的な国産ウイスキーを訪ねる旅は、地域の秘められたストーリーや、思いがけない出会いに満ちている…さあ今年は「ウイスキーで旅する日本」に、新しい景色を見つけに出かけませんか!(用語・蒸留所情報付き)
■地域に根ざした蒸溜所を通じて見えてくる“もうひとつの日本”の旅へ。
2000年代初頭、世界的な品評会で相次いで賞を獲得し注目を浴びた国産ウイスキー。その後20年でその地位は確立され、今では“ジャパニーズウイスキー”というカテゴリーで世界を沸かせています。スコッチやバーボンのような力強い個性とは対照的に、日本のウイスキーは繊細でバランスの取れた味わいが特徴。それは“余白の美”とでも呼ぶべき景色かもしれません。
季節や地域の食材に合わせて器や盛り付けを変える和食文化のように、見立てや“間”を愛でる楽しみでしょうか。その個性や表情を知るには、やはり蒸溜所やその土地に足を運びたくなります。
近年、国内でもウイスキーツーリズムが注目を集めています。各地に点在する蒸溜所では、地元の文化や自然を感じる体験ができます。都市を離れて産地を巡る旅では、酒だけでなく食、文化、そして地域の人々と深く出会い直せる機会となるでしょう。
白州蒸留所(山梨県北杜市)南アルプスのふもと、広大な森の中に佇む
■地方に眠る、世界が注目する味
世界的にも有名なサントリーの山崎蒸溜所(京都)は、日本最初のウイスキー蒸溜所。湿潤で温暖な気候と名水の地として知られる天王山のふもとで、繊細でバランスの取れたウイスキーが生まれています。白州蒸溜所(山梨)は、標高が高く清澄な水と冷涼な気候が特徴で、フレッシュで爽やかなウイスキーが造られています。ニッカの余市蒸溜所(北海道)は、スコッチの影響を色濃く受け、寒冷な気候と良質な雪解け水を活かし力強いスモーキーなウイスキーが目覚めを待ちながら熟成を続けています。それら地域を訪れることで、その風味が土地の自然と結びついていることを肌で感じられます。
さらに先行する名門に続き、全国に新しい蒸溜所が続々と誕生しています。信州の冷涼な気候を生かしたマルス信州蒸溜所(長野)や、秩父の自然と共に進化する秩父蒸溜所(埼玉県)。さらに、厚岸蒸溜所(北海道)では、その気候・立地からのアイラモルトのようなスモーキーな一杯に出会えます。こうした地域の風土を反映したウイスキーが続々と登場し、秩父蒸溜所や小諸蒸溜所(長野県)では、ウイスキー検定合格者向けの限定ツアーもあります。
山崎蒸留所(京都):サントリーが作った日本で最初のウィスキー蒸留所。ここだけで全ての原酒を賄えるよう、16基の形の違うポットスチルを揃えた。
白州蒸留所(山梨):サントリーの広大な「森の蒸留所」。南アルプスの伏流水で軽やかな香味の「白州」シリーズを生む。
余市蒸留所(北海道):ニッカが運営するシグニチャー『余市』シリーズは石炭直火蒸留、そして北の大地と海風がスモーキーなシングルモルト育み、また宮城峡蒸留所にてスチームの間接蒸留やカフェスチルで作るグレーン原酒などをブレンドすることで、様々な味わいのブランドを展開する。
マルス駒ケ岳蒸留所(長野):中央アルプス駒ケ岳の水、同地で作られるワインのワイン樽。祖業の鹿児島津貫での焼酎造りなどのバックボーン。
秩父蒸留所(埼玉※公式はFacebookのみ):イチローズモルトで知られる。標高のある寒暖差と秩父の軟水が個性豊かな熟成を生む、地域と共に歩むクラフトの旗手。
厚岸蒸留所(北海道):霧深い湿原に佇む蒸留所、海沿いの熟成庫。アイラ島を彷彿とさせる泥炭の立地でピート香をまとう土地の酒を造る。牡蠣との相性も抜群。
小諸蒸留所(長野):八ヶ岳連峰や浅間山の自然を望む高台のロケーション。長い熟成を見据えた造りで、木樽庫にもこだわる新鋭。
■旅でこそ味わいたい、ウイスキーと地域の味覚
自宅で静かに楽しむのも良いですが、旅先での味わいは格別です。たとえば、キリンが運営する富士御殿場蒸溜所(静岡)では、冷たい空気の中で富士山の伏流水を使ったクリアな味わいを楽しむことができます。飯山マウンテンファーム蒸溜所(長野)では、高原の澄んだ空気の中で熟成中の原酒を見学し、味わえます。また、蒸溜所併設のバーやレストランも充実してきています。嘉之助蒸溜所(鹿児島)では、温暖な気候で育まれたフルーティーな原酒を海を眺めるゆったりとしたバーで味わえます。そして2025年には広島・廿日市に「SAKURAO YOSHIWA WHISKY PARK」が開設予定、「蒸溜所」を超えた観光体験型施設の計画が進行中です。ウイスキーを通じ地域の歴史や食文化を深く知ることができる、ワイナリーツーリズムを思わせる本格的な“体験型の旅”が期待されています。
また地域によっては、地元農家が原料の大麦を栽培したり廃材を使った樽づくりなど、持続可能な生産環境への取り組みが進行中。訪れる側も、単なる消費者ではなく、土地の営みに触れる“共感者・支援者”として関わる喜びがあります。
■土地の風味を感じるニューボーンウイスキー
新たな蒸溜所では、特に熟成が浅く3年以内のものを指す「ニューボーン」を提供するブランドが増えています。たとえば、瀬戸内蒸溜所(広島)では、オロロソシェリー樽で熟成した「瀬戸内1年」が。山鹿蒸溜所(熊本)では、栗樽を使用した「山鹿ニューボーン」の、独特の甘みと香ばしさが魅力です。ニューボーンは、土地の風土が生んだ風味をダイレクトに感じることができ、ストレートやトワイスアップで個性を堪能するのがお勧めです。
トワイスアップ:ウイスキーと同量の常温の水を加えて飲むスタイル。
富士御殿場蒸留所(静岡):キリンが運営する大規模蒸留所。富士山の伏流水と多彩な蒸留設備により、バランスのよいブレンデッドウイスキーを生み出す。
飯山マウンテンファーム蒸留所(長野):環境再生型の農耕と蒸留を融合。自社栽培の大麦や薪の火入れなどの取り組みが光る。蒸留所サイトはこちら(英語)
嘉之助蒸留所(鹿児島):東シナ海を望む地に構える「日本一美しい蒸留所」。温暖な気候と焼酎文化の蓄積を活かし、南国の熟成と樽香をまとった柔らかな味わいが特徴。
瀬戸内蒸留所(広島):生口島にある、日本でも珍しい“海辺の蒸留所”。瀬戸内の穏やかな風土と海のミネラルが、まろやかで軽やかな原酒を育む。
山鹿蒸留所(熊本):山鹿の温泉地に誕生。歴史ある湯の街と豊富な地下水を背景に、九州内外の樽文化を融合した熟成が進む。
SAKURAO DISTILLERY(広島)(SAKURAO YOSHIWA WISKY PARK):海沿いの本拠地に加え、山間の吉和にも熟成庫を持つ二拠点体制。熟成環境の違いを活かし新しい挑戦が続く。2025年秋に複合施設のWISKY PARKを開設予定。
■自分だけの“蒸溜所リスト”で旅をする楽しさを
全国には現在、大小合わせて60以上のウイスキー蒸溜所があります。その中には、遊佐蒸溜所(山形)や静岡蒸溜所(静岡)のように、小規模ながら熱い支持を集める個性派も多く、いわば“ウイスキー版クラフトビール”とも言える世界が広がっています。
次の旅の目的地は、美術館や温泉だけではなくウイスキー蒸溜所もいかがでしょうか。そこで出会うウイスキーはとても贅沢に、帰宅後にも味わうたび、思い出や話題を生んでくれる特別な一杯になるでしょう。
時を重ねるごとに新たな顔を見せるウイスキーとの再会を楽しみに、次の旅へ出発しませんか。
提供:ⒸイツトナLIVES/シャープファイナンス
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