コラム
2025/09/19
こんなはずでは…年収650万円の30代サラリーマン大家が苦汁を飲まされた「地方・高利回り物件」の落とし穴【FPの助言】
公開日:2025年09月19日 更新日:2025年09月19日
※画像はイメージです/PIXTA
サラリーマン大家という言葉が表すように、以前は富裕層の資産運用手段であった「不動産投資」ですが、近年その裾野が広がっています。
会社員など本業の傍ら不動産投資を行う“副業大家”が増加する一方で、高利回りを謳った物件に騙され、大きな損害を被る大家も増えているようです。30代男性の事例をもとに、高利回り物件の落とし穴”についてみていきましょう。
株式会社FAMORE代表取締役の武田拓也FPが解説します。
■給与への劣等感から“甘い言葉”につられたHさん
30代前半のHさん(男性)は、都内の有名私大を卒業後、新卒で入社したIT企業に勤めています。就職活動もスムーズで、第一希望の会社に就職。順調に昇進しており、自身では順風満帆な人生を歩んでいると思っていました。
しかし、久しぶりに開催された大学の同窓会の席で、そのHさんの意識は一変します。集まった同級生たちの職業や働きぶりを聞くにつれ、「俺、あいつらよりも年収が低いのでは?」と感じたのです。同窓会を終えてから、Hさんは「このままでいいのか」と焦燥感に駆られ、仕事にも身が入りません。気づけば、普段なら無視する不動産業者からの営業電話に出ている自分がいました。
「不動産を購入すれば、なにもせずとも家賃収入が入ってきます!」
「融資を利用すれば、頭金は必要ありません」
「節税になるうえに、生命保険の効果までついてくるんですよ」
「将来の自分年金、準備できていますか?」
「いまイチオシの“高利回り物件”がありまして……お話だけでもいかがですか? 上手くいけば生活水準が一段上がりますよ!」
……営業マンの“耳あたりのいい言葉”につられたHさんは、担当者の熱量にあてられ、あれよあれよという間にその気に。銀行融資も無事にとおり、地方の中古アパートを購入することになりました。
「なにもしなくてもお金が入って、節税効果まであるのか……メリットしかないな」
これで同級生と肩を並べられると、浮かれるHさん。しかし、ふたを開けてみると、予想外の結末が待ち受けていたのです。
■「高利回り物件」を購入したHさんの“末路”
Hさんが物件を購入してから数ヵ月後、管理会社から頻繁に連絡が入るようになりました。
「漏電しているようなので、ブレーカーの交換が必要です」
「『お湯が出ない』と入居者から連絡がありました。給湯器を取り換えます」
買ったばかりにもかかわらず、短期間に30万円以上もの出費が発生。月々の収支はプラスになるどころかマイナスです。
また、前の入居者が退去してから新しい入居者がなかなか決まらず、ローン返済の負担が重くのしかかります。入居者が決まらない理由について管理会社の担当者に尋ねたところ、驚きの回答が返ってきました。
「地方の物件ですし、近くに墓地があるので……。内覧に来られても、なかなかいい返事がいただけないんです」
「えっ!? 墓地があるんですか?」
Hさんは、物件が遠方だったことに加え、仕事が忙しかったため、実際に物件を見ることなく購入に至りました。そのため、近くに墓地があることは“寝耳に水”です。
このままではいけないと新幹線のチケットを取り、休日に現地を見に行くと、物件からほど近い場所に大きな墓地があります。
「俺だったらここには住まないな……くそ、騙された!」
Hさんはすぐに、物件を購入した不動産会社へ連絡しました。
「おい! 物件の近くに墓地があるなんて聞いてない! これじゃあ入居者が決まらないのも当たり前じゃないか!」
怒りに任せてこう伝えると、担当者は冷静に言いました。
「当該物件を購入される際に、重要事項説明書にサインされましたよね? そこにきちんと記載されていますよ」
「なんだって……」
帰宅後、早速自宅に保管していた重要事項説明書を確認すると、たしかに墓地が物件の近くにあることについて記載がありました。
さらに、営業マンが言っていた「節税効果」も、Hさんは本業での収入に加えて家賃収入が入ってくるため、思っていたほどの効果はありません。
「くそっ、やられた……」
このまま物件を保有していても、またいつ修繕費用が発生するか気が気でないHさんは、物件を売却しようと考えます。
— 衝撃の「見積もり額」に唖然のHさん
物件を購入した業者とは別の不動産会社へ売却価格を問い合わせてみると、購入した金額よりもはるかに低い金額を提示されます。
「周辺の相場から考えると、このあたりの物件はお客様が購入された金額よりも安く取引されています。そのため、Hさまがおっしゃる金額での売却は難しいと思いますよ」
話を聞いて、目の前が真っ暗になるHさん。売却すれば修繕リスクや空室リスクの不安からは解放されますが、借金だけが残ってしまいます。
とはいえ、このまま物件を所有し続けても修繕とローン返済で手元の資金が減りかねません。Hさんは、途方に暮れてしまいました。
■ 地方にある中古物件は「ハイリスク・ハイリターン」
不動産投資において、都市部の物件は需要が高いことから価格も高くなり、家賃収入で得られる利回りは低くなります。一方で、地方の物件になると都市部と比較して需要が低いことから不動産価格も安くなるため、家賃収入による利回りは高くなります。また、Hさんが購入したのは中古物件です。中古は新築に比べて価格が安くなるものの、得られる家賃収入はそこまで下がらないため、利回りが高くなりやすい傾向にあります。
つまり、表面的な利回りだけでみると、都市部よりも地方にある中古物件は「高利回り」といえるでしょう。
ただし、「高利回り物件」と聞くと耳あたりはいいものの、投資はハイリスク・ハイリターン、ローリスク・ローリターンが基本です。利回りが高いということは、それだけリスクも高くなります。地方は都心部と比べて賃貸需要が弱く、入居者探しのハードルが高い傾向にあります。そのため、空室期間が長期化しやすいのです。そして当然、その間は家賃収入がありません。
さらに中古物件の場合、修繕リスクが高くなります。新築物件であれば10年ほどは修繕を見込む必要がない一方、築10年以上が経過している中古物件においては、給湯器やエアコンの交換や外壁の修繕など、さまざまな費用が立て続けに必要になる可能性が上がるのです。
■不動産投資は「事前戦略」がカギ
同級生への劣等感から不動産営業マンの甘い言葉を真に受け、自分で物件を確認することもなく購入に至ったHさん。
副業大家のなかにはこうした初歩的な失敗によって多額のマイナスを抱えてしまう人が少なくないのです。
不動産投資を検討するのであれば、まずなによりも検討する物件・エリアに潜む「リスク」の把握が最優先です。そのうえで、そのリスクに対してどのような対策がとれるか戦略を練ったうえで購入に踏み切るべきでしょう。また、不動産投資とひと口にいっても、「区分マンション」や「1棟アパート」、「1棟マンション」、「築古戸建」、「駐車場」、「不動産小口化商品」、「リート(REIT)」、「海外不動産投資」など、その種類は多岐にわたります。
投資にはリスクがつきものですから、まずはそれぞれの方法についてメリット・デメリットを知り、綿密な事前調査を行ったうえで、自分に合った無理のない方法を探してみてはいかがでしょうか。
〈著者情報〉
武田 拓也
株式会社FAMORE 代表取締役(編集:幻冬舎ゴールドオンライン)
提供:ⒸイツトナLIVES/シャープファイナンス
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