コラム
2025/01/31
税理士がわかりやすく解説!リースの税務と会計の基礎知識
公開日:2025年01月31日 更新日:2025年01月31日
弊社とお取引いただいている皆さんは機器をご販売いただく際にご利用いただいているので、「リース」自体は馴染みのあるものですよね。一方で、リースの税務処理や会計処理については不安を感じている方も多いのではないでしょうか。本コラムでは、税理士の視点からリースの基本的な税務と会計の知識をわかりやすく解説します。リースの種類やその違い、税務上の取り扱い、会計処理の方法など、具体的な事例を交えながら詳しく説明していきます。
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「所有権移転外ファイナンスリース」と「所有権移転ファイナンスリース」の区分は、リース期間終了時に所有権が確実に移転するかどうかに基づきます。
所有権移転ファイナンスリースは、以下のいずれかの条件を満たす契約です。
①リース契約中または終了後に、所有権が使用者に移転する
②割安購入選択権(他の対象物に比べて著しく有利な価格で買い取る権利)が付いており、その権利行使が確実に予想される
③対象物が使用者の用途に合わせて特別仕様で製作され、契約満了後に第三者への売却・リースが困難である
④識別困難な資産のリース取引
⑤リース期間が法定耐用年数に比して相当短いリース取引
耐用年数の70%(耐用年数が10年以上のリース資産については60%)相当する年数を下回る期間
一方、所有権移転外ファイナンスリースは、契約終了後に使用者が対象物を取得できない契約です。
この場合、契約期間終了後の選択肢として、資産の返却、再リース契約の締結、または買い取りオプションの行使が考えられます。
リース取引の会計処理は原則として売買処理(オンバランス)となります。これは、リース契約した物件の総額を資産に計上し、リース契約期間で減価償却費として処理する方法です。
ただし、以下の一定の条件を満たす少額なリース取引の場合、賃貸借処理(オフバランス)が認められています。また中小企業(中小企業の会計に関する指針の適用企業)については以下の条件を満たさなくても賃貸借処理が認められます。
①「所有権移転外ファイナンスリース取引」である
②一契約あたりのリース料総額が300万円未満である
③企業の事業内容に照らして重要性の乏しい資産(※)である
(※)重要性の乏しい資産の例:会社で使用するパソコン、社用車、一般的な事務機器など
一方で、中途解約が原則不可能である点や、中途解約の場合に残リース料と違約金の支払い義務が発生する点に注意が必要です。
資産計上を行う「売買取引」は通常の固定資産を取得した場合と同様の処理となり、法定耐用年数もしくはリース期間に応じて減価償却を行うことにより経費計上します。
一方、「賃貸借取引」では物件が必要な期間に応じてリース料を支払うため、支払時(もしくは支払義務の発生時)に経費計上します。
所有権移転・所有権移転外ファイナンスリースは資産計上を行う「売買処理」が原則です。所有権移転の場合は法定耐用年数、所有権移転外の場合はリース期間に応じて減価償却を行います。
オペレーティングリースは「賃貸借取引」が原則です。その他、重要性の乏しいと認められる少額資産のリース取引に関して、リース会計基準では1件当たりのリース料総額が300万円以下、リース期間が1年以内の場合など、また一定の条件を満たす中小企業では、例外として賃貸借取引が可能とする規定があります。
資産計上されたリース資産は、減価償却を通じて経費化されます。ただし、リース取引の形態によって償却年数と償却方法は異なります。
▶所有権移転ファイナンスリース取引の場合
・償却年数:リース対象資産の法定耐用年数を使用
・償却方法:自己所有の固定資産と同一の方法(定額法、定率法など)
▶所有権移転外ファイナンスリース取引の場合
・償却年数:原則としてリース期間を使用
・償却方法:定額法
リース資産の減価償却費は、毎期の損益計算書に計上され、課税所得・利益の計算上も経費として認められます。期の途中に取得した場合は、初年度は月割りで減価償却費を計上します。
リースの会計処理において、資産計上と経費計上では消費税への影響に違いがあり、それぞれのケースで消費税の扱いが異なります。
資産計上処理の場合、リース契約開始時にリース資産を購入したとみなし、リース料総額に対して消費税が課されます。この消費税は一括で仕入税額控除の対象となります。
経費計上処理の場合、リース料が支払われるたびに各支払いに対して消費税が課されます。リース期間中の各支払時点で支払リース料にかかる消費税を仕入税額控除の対象とします。
ただし、免税事業者および簡易課税制度選択事業者は、リースにかかる消費税を個別に計算・控除する必要はありませんので、消費税の申告における計算や納付において影響はありません。
解約については、ファイナンスリース取引と賃貸借契約(レンタル)で扱いが異なります。
▶ファイナンスリース取引
ファイナンスリースの要件は、フルペイアウトとノンキャンセラブル(中途解約不可)です。そのため、基本的に解約は不可能です。ただし、中途解約する場合には、残期間のリース料またはそれに相当する違約金を一括で支払うよう、契約で定められています。
▶賃貸借契約(レンタル)
基本的には解約可能です。ただし、土地、建物などの不動産や比較的長期の動産契約の場合は、解約予告期間を設けるなど一定の制限があるケースがあります。中途解約金や違約金を支払った場合には、「解約損」、「違約金」という損金が発生します。なお、これらの支払いは一般的には消費税の課税対象にはなりません。
借入のしやすさは一般的には自己資本比率(純資産÷資産総額)の高さに比例します。設備購入の場合、会計処理上、現金が備品に変わるだけで自己資本比率に影響はありません。リースの場合も、リース料支払い時に経費計上するため、こちらも自己資本比率に影響はありません。※本回答では、減価償却費や各種利息等については省略しています。
ただし、開業後の資金繰りを考慮すると、突発的な支払いに備え現金を多く残せる選択はリース契約です。対して、リースは本体価格に手数料が上乗せされるため、一括購入よりも総支払額が大きくなる事が一般的です。
結論として、借り入れへの影響は大きくは無いですが、資金繰りの安定性を重視するか、コスト削減を優先するかによって、最適な選択は異なります。
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購入機器の場合は、自社の所有物であるため売却が可能です。リースした機器に関しては、廃業という借り手側の都合で一方的に解約することはできません。ファイナンスリースでは、「資産を長期間で分割購入している」と考えるため、基本的に中途解約ができず、残っているリース料全額と違約金を支払わなければなりません。オペレーティングリースでは「リース料を払って資産をレンタルしている」と考えるため、中途解約が可能ですが違約金の支払いが発生します。これらの料金は一括で支払うことになっているため、注意が必要です。
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著者:日本クレアス税理士法人 執行役員/中川 義敬 税理士(近畿税理士会所属)
【経歴】2007年税理士登録、2009年に日本クレアス税理士法人入社。現在に至るまで、東証一部上場企業から中小企業・医院の税務相談、税務申告対応、医院開業コンサルティング、組織再編コンサルティング、相続・事業承継コンサルティング、経理アウトソーシング、決算早期化等に従事。医院の新規開業支援、会計税務、医業承継・相続対策など、個人医院から大病院までをサポートしてきた医療分野での
高い経験を生かすため、2019年7月大阪本部 本部長に就任。現在に至る。
提供:ⒸイツトナLIVES/シャープファイナンス
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