コラム
2025/08/08
金利は上がり続ける?…マイホームを買う前に知っておきたい「住宅ローン」の賢い選び方【お金のプロが解説】
公開日:2025年08月08日 更新日:2025年08月08日
※画像はイメージです/PIXTA
多くの人にとって「人生で最も高額な買い物」となるマイホーム。購入にあたっては「住宅ローン」を組む人がほとんどでしょう。この住宅ローンについて、変動金利と固定金利どちらを選ぶべきか、頭を悩ませる人は多いです。そこで、株式会社FAMOREの山原美起子CFPが、住宅ローンの仕組みや特徴について解説します。
■「低金利時代」の終焉
住宅ローンの金利は、大きく分けて「変動金利」と「固定金利」の2種類です。
まず変動金利は、主に短期プライムレート※に連動します。そしてこの短期プライムレートは日銀の政策金利の影響を強く受けます。つまり、日銀が政策金利を引き上げると短期プライムレートも上昇し、それに連動して変動金利も上がる、という仕組みです。
※短期プライムレートとは、金融機関が優良企業向けの短期貸出(1年未満の期間の貸出)に適用する最優遇金利のこと
多くの金融機関では、短期プライムレートに1%上乗せしたものを基準金利とし、そこから独自の引き下げ幅を差し引いたものが、実際の借入金利として適用されます。
政策金利の動向を読み解くうえで注目されるのが「消費者物価指数」です。この指数は2022年度以降、3年連続で3.0%超の上昇が続いており、もはや一時的な物価高とは言い切れません※。
※総務省「2020年基準消費者物価指数」
日銀はインフレ対応で2024年3月にマイナス金利を解除し、同年7月および2025年1月に追加利上げを行いました。今後も利上げが見込まれており、変動金利には上昇圧力になっています。
一方、固定金利は10年国債の利回りに代表される「長期金利」を基準としています※。長期金利は市場の需給や国際情勢によっても変動しやすく、現在アメリカの関税問題により不安定な動きをみせていますが、こちらも上昇傾向が見られます。
※財務省「国債金利情報」
住宅金融支援機構の「フラット35」(借入期間21年以上、融資率9割以下)における最低水準の借入金利は、2023年度末時点で年1.96%と、過去数年で最も高い水準を記録しました※。
※住宅金融支援機構「フラット35」借入金利の推移(R5年3月)
なお、金融機関独自の金利優遇制度には、条件を途中で満たさなくなった場合に金利が引き上げられるケースなどもあるため、自身の収支状況や家計に見合っているか慎重な検討が必要です。
■変動金利型、固定金利型…住宅ローンの主な種類と特徴
次に、一般的に利用されている住宅ローンの種類とそれぞれのメリット・デメリットをみていきます。
1.変動金利型
これは、市場金利の動きに応じて金利が変化するタイプの住宅ローンです。借入当初の金利が他のタイプよりも低めに設定されている点が大きな魅力といえます。
・低金利の恩恵を受けやすい……金利が低い時期には返済額を抑えることが可能です。
・金利上昇の上限が設けられている場合がある……多くの金融機関では「5年ルール」や「125%ルール」など、返済額の急激な増加を抑える仕組みが導入されています。
〈デメリット〉
・金利上昇のリスクがある……市場金利が上がると、返済額も増える恐れがあります。
・将来の返済額が不確定……金利しだいでは、当初の返済計画にズレが生じる可能性もあります。
2.固定期間特約型
一定期間(3年・5年・10年など)の金利を固定したあと、変動金利型または再度固定金利期間を選択できるタイプです。一定期間終了後の金利動向には注意しなければなりません。
・一定期間の返済額が固定される……金利変動の影響を受けずに返済計画を立てられます。
・期間終了後に金利タイプを見直せる……状況に応じて金利の種類を変更できる柔軟性があります。
〈デメリット〉
・固定期間終了後の金利が読みにくい……その時点での市場金利によって返済額が変動する可能性があります。
・当初の金利はやや高めに設定されていることが多い……変動金利型よりもリスクを金融機関が負うため、金利水準が上がる傾向があります。
3.全期間固定金利型(フラット35)
借入時の金利が返済終了まで変わらないタイプです。住宅金融支援機構と提携しているため、比較的審査が通りやすいケースもみられます。
・返済計画が立てやすい……将来的な返済額が確定していることで、安心して資金計画を組むことができます。
・金利上昇の影響を受けない……将来どれだけ市場金利が上昇しても、返済額は変わりません。
〈デメリット〉
・借入当初の金利が高めになりやすい……リスクを金融機関が負わない分、金利は高めに設定されがちです。
・金利が下がってもメリットが得られない……市場金利が低下しても、契約時の金利が適用され続けます。
■「まずは変動金利」は昔の話…いま最適な住宅ローンの選び方
上記3つの金利タイプのなかで、これまでの低金利環境では「まずは変動金利」という選択が主流でした。住宅金融支援機構の調査(2024年10月)によれば、約8割の住宅ローン利用者が変動金利を選んでいます※。
※住宅金融支援機構「住宅ローン利用者の実態調査(2024年10月)
しかし、金利が上昇傾向にある現在、すべての人に変動金利が最適とはいえません。
働き方や目的に応じて向き・不向きがあるため、自身に適したタイプを、以下の例を参考に検討してみるとよいでしょう。
変動金利型に向いている人:返済額の増加に柔軟に対応できる人
・共働きで世帯収入に余裕がある
・自己資金にゆとりがあり、繰上返済も視野に入れている
・借入期間が比較的短い
→こまめに金利動向をチェックし、必要に応じて借り換えを行うなど、柔軟な対応が可能な人に適しています。
固定期間選択型に向いている人:返済額が増えると家計への影響が大きい人
・自己資金が少なく、余裕のある返済が難しい
・近い将来に教育費などの大きな支出が見込まれる
・まずは一定期間の安定した返済を希望している
→金利リスクを抑えつつ、変動金利のメリットも取り入れたい人に向いています。
フラット35に向いている人:家計の長期的な安定を重視する人
・将来の金利変動に不安を感じている
・一定の返済額で計画的に家計を管理したい
・自営業・フリーランスなど収入が変動しやすい職種
→また、子育て支援など、国の優遇制度を活用したい場合にも適しています。
■最新情報をチェックしながら、自分に合ったローン選びを
住宅ローン選びで重要な金利タイプを中心に解説してきました。この他にも、団体信用保険や事務手数料、保証料など、比較すべきポイントは多岐にわたります。
加えて、不動産に関する制度や政策は常に変化するため、最新情報のキャッチアップは不可欠です。買いたい物件を優先するあまり「わからないことは後回し」とせず、専門家のアドバイスも参考にしながら、総合的な視点で選びましょう。
〈著者情報〉
山原 美起子 株式会社FAMORE
ファイナンシャル・プランナー(CFP/1級ファイナンシャル・プランニング技能士)
提供:ⒸイツトナLIVES/シャープファイナンス
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