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こんなはずじゃなかった…マンションの管理費・修繕積立金の「値上がり」が避けられない、これだけの理由【FPが対応策を伝授】

公開日:2024年07月05日 更新日:2024年07月05日

マイホーム購入を検討する際、「戸建て」か「マンション」で悩む人も多いのではないでしょうか。マンションを選択する場合、物件購入費のほかに必ずかかる費用が「管理費」と「修繕積立金」です。決して安価とはいえないこれらの費用ですが、購入時の金額より「値上がり」するケースが増えているといいます。マンションの管理費・修繕積立金の現状について、ファイナンシャルプランナーの中山梨沙氏が解説します。

「管理費」と「修繕積立金」はどんな用途に使われるのか?
1964年の東京オリンピックをきっかけに、建設ラッシュが始まった「マンション」。原宿駅前の「コープオリンピア」は、第1次マンションブームの代名詞といえるでしょう。その後、耐震技術の進歩などを経て、2000年代の「タワマンブーム」に突入し、今に至ります。首都圏を中心に、現在もマンションは急速に増えており、これから分譲マンションの購入を考えている人、もしくはすでに分譲マンションに居住している人も多いかと思います。

マンションを購入する際、必ず知っておきたいのが、マンションの維持費用、すなわち「管理費・修繕積立金」についてです。もちろん、それらを踏まえたうえで、購入を検討する人が多数派だと思います。しかしながら、管理費・修繕積立金が、状況の変化や時の経過とともに値上がりすることについては想定できているでしょうか? 「こんなはずじゃなかった……」とならないためにも、事前に知っておくことが大切です。

まずは、管理費と修繕積立金は、いったいどのような名目で使われているのか、見ていきましょう。管理費は、マンションの共有部分の清掃や設備点検など、住みやすさを維持していくために使われるお金です。管理費は、共用部分が充実しているほど高額になります。

例えば、マンション内にジムが併設されていたり、ゲストルームが沢山あったり、滝があったり、そのような場合は、維持に多額のお金がかかります。国土交通省の調べでは、関東のマンション管理費の平均は、月額1万6,000円程度といわれています。

一方、修繕積立金は、将来的に発生しうる共用部分の大規模な修繕に備えて積み立てるお金です。外壁の塗り替えやエレベーターの交換といった、経年劣化に対応する工事、エントランスやロビーの改装、自然災害や事故による修復工事などが、おもな修繕積立金の使い道です。これらは大体15年前後で発生します。関東のマンションの修繕積立金は、月額1万4,000円程度が平均です。

実際、エレベーターを新調するには、1基あたり1,200~1,500万円かかるといわれています。その金額を聞けば、必要なときに一気に集金されるより、コツコツ集めてもらったほうがよいと、おわかりいただけるでしょう。

とはいえ、月々の住宅ローン返済に加え、管理費と修繕積立金を合わせると3万円程度が毎月かかるのは、大きな負担です。さらに値上がりとなると、家計のひっ迫は免れません。なぜ、このような事態が増えているのでしょうか? それぞれの要因について解説していきます。

こんなはずじゃなかった…
マンションの「管理費・修繕積立金」が上げるワケ

まずは、管理費からです。ここでは下記の3つの要因に焦点をあてて説明します。

  • 人件費の高騰
  • 電気代の値上がり
  • 駐車場契約者の減少

1つ目は「人件費の高騰」です。日本は深刻な少子高齢化のため、労働力が不足しています。そうした局面では、「売り手市場」となり、条件の悪い仕事は、働き手に選ばれない傾向が強まります。その流れで、共用部分の清掃や点検をするマンション管理人の人手不足も、近年、深刻化しています。

2つ目は「電気代の値上がり」です。ロシアのウクライナ侵攻をきっかけに、世界的に資源価格が高騰しました。当然、日本も大きく影響を受けています。共用部分の電気や空調にかかるコストが上がっているのです。

3つ目は「駐車場契約者の減少」です。マンションによっては、駐車場代を管理費収入に含めるケースが少なくありませんが、昨今、カーシェアの利用率が増え、マイカーを持たない世帯が出てきました。駐車場収入自体が減少しているマンションが出てきているのが現状です。

続いて、修繕積立金の上昇要因です。下記3点の要因が考えられます。

  • 甘い大規模修繕計画
  • 管理会社に任せっきり
  • 材料費の高騰

1つ目は「甘い大規模修繕計画」です。修繕にかかる費用を安く見積もっていれば、当然不足が発生します。なかには、あえて販売時に安くしている場合があります。マンションを販売する際、維持費を低く見せたほうが売りやすいからです。

2つ目は、「管理会社に任せっきり」というケースです。マンションの管理は、所有者で構成される管理組合でおこなうものですが、ほとんどの場合実務を管理会社に委託しています。便利な一方で、デメリットもあります。というのも、管理会社は、管理組合の財務状況を把握しているからです。

管理組合が、大規模修繕にいくら払えるのか、限度額を把握しているため、それに合わせて、不要な工事を足されたり、工事費用を高めに設定されたりする場合があります。また、管理会社は、管理組合からの一任で動いているため、見積もりを複数社に依頼せず、親しい施工業者に発注するケースも散見されます。

3つ目が「材料費の高騰」です。経済産業省の調べによると、ウッドショックによって集成材と製材の輸入物価指数は、ここ数年で2倍以上になったといわれています。新型コロナウィルスの流行により、米国内の住宅需要が高まり、今まで輸出していた木材を自国で消費するようになったのも大きな要因です。鋼材は、経済活動の再開後、一変して需要が高まったため、高騰しました。木材にしろ、鋼材にしろ、日本は輸入に頼っているため、現状の円安水準ではコスト高に繋がっています。

今後も上がり続ける「管理費・修繕積立金」にどう対処するか
それでは、今後マンションを購入する場合、もしくはすでに居住中の場合は、どういった点を留意すればよいのでしょうか?

[これから購入する場合]
まずは、管理費・修繕積立金の水準を確認しましょう。具体的には、管理費には「駐車場代」が含まれているのか、その空車状況はどうか、といったことになります。人件費などやむを得ない要因はあるものの、駐車場は外部に貸し出すなどの対策が可能です。修繕積立金が、共用部分が充実しているのに低額な場合は、不動産業者に均等積立方式なのか段階積立方式なのかを確認しましょう。

[すでに居住している場合]
管理会社に任せっきりにするのではなく、定期的に開催される管理組合の集まりに積極的に参加し、修繕の見積もりが適正なのか否かを確認するようにしてください。管理費と修繕積立金を合わせて、毎月3万円超の場合、年間で36万円、30年住めば1,000万円を超える大きな費用を払うことになります。将来困らないように、購入時に踏み込んで確認することが大切です。

不動産購入は大きな金額が動くうえ、維持費用もかかります。人生でもっとも大きな買い物と言われる「マイホーム購入」だからこそ、悔いのないように、物件選びの際は、費用面のリサーチも万全に行なったうえで決断するようにしたいものです。

<参考資料>
出所:総務省 令和元年住宅・土地統計調査
出所:国土交通省「平成30年度マンション総合調査」P205
出所:国土交通省「平成30年度マンション総合調査」P176


著者:中山 梨沙(なかやま りさ)
FP Office株式会社 ファイナンシャルプランナー
大学卒業後、メガバンクにて12年間勤務。主に預金や投資信託、住宅ローン、相続遺言等リテール営業に従事。金融教育に携わるべく、企業型DCの加入者向け教育業務も経験。その後、外資系保険会社に移籍し、リスクマネジメントなどのより幅広い実務経験を積むなかで、ひとつの金融機関に属さない職業としてのFPになる決意を固め、現職に転身。「お金に関して、巷に溢れる情報やセールスに惑わされず、必要なものを自身で取捨選択できる人を増やしたい」。そんな信念で日々活動している。

編集:株式会社幻冬舎ゴールドオンライン
ⒸイツトナLIVES/シャープファイナンス

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