コラム

企業価値を守るために必須!「知的財産権」の基礎知識を専門家が解説

公開日:2024年12月13日 更新日:2024年12月13日

みなさん、「知的財産権」という言葉を聞いたことはありますか? 普段、生活するなかで、なかなか意識することがない「知的財産権」(=知財権)ですが、企業で日々生まれている新しい技術やアイデアと、実は密接な関わりがあります。今回、知的財産権の専門家である鈴木健二郎氏が、知財の基本知識とその重要性を、近年話題になった事例とともに、解説します。

「知的財産権」ってなに?
会社で新しいアイデアや技術が生まれるたびに、それがどのように保護されるべきか、みなさんは考えたことはありますか? 例えば、あなたの会社のロゴや製品デザインが、他社に真似されたら、どのように対処すればよいのでしょうか。このような問題に直面したことがない人も、今後起こりうる可能性は大いにあります。まずは、「知財」の基本知識から見ていきましょう。

「知的財産権」とは、人々が創造したアイデアや知識を、法的に保護する権利のことを指します。これには「特許権」「商標権」「著作権」「意匠権」などが含まれます。それぞれを簡単に説明すると、以下の通りです。

特許権……新しい発明を保護する権利
商標権……商品やサービスを識別するためのマークを守る権利
著作権……文学や音楽、アート作品を保護する権利
意匠権……製品のデザインを守る権利

これらの権利は、創造者や発明者がその成果から利益を得ることを可能にし、さらに他者による不正使用を防ぐための強力なツールとなります。特に、ビジネスの世界では、知的財産権が競争力を高め、企業のブランド価値を守るために重要な役割を果たしています。

知的財産権で“合法的に”勝てるワケ
知的財産権がなぜ重要なのかを理解する際に、まず、ビジネスマンのみなさんにとっての「メリット」を考える必要があります。以下に、3つのポイントを挙げます。

メリット①:競争優位性と利益の確保
企業が市場で競争優位を維持するためには、独自の技術やブランド、デザインを持つことが重要です。知的財産権を取得することで、これらの独自性を法的に保護し、他社が同様の製品やサービスを模倣することを防ぐことができます。例えば、特許権を取得した技術は、他社がその技術を使用するためには「ライセンス契約」が必要となり、企業にとっては収益の一部となります。

メリット②:ブランド価値の「保護」と「向上」
商標権は、企業のブランド価値を保護し、さらに向上させるための重要な手段です。ブランドは、消費者に対する信頼と認知度を構築するために不可欠であり、商標権によって、他社が類似の名称やロゴを使用することを防ぐことができます。これにより、消費者が偽ブランドや粗悪な模倣品に惑わされることなく、企業の本物の商品やサービスを選ぶことができるようになります。

また、商標権を適切に管理することで、企業はブランドの独自性を強調し、市場での存在感を高めることができます。これにより、新たな市場への進出や消費者の認知度向上を図ることができ、結果として、ブランド価値の向上に繋がることとなります。

メリット③:収益の最大化
著作権や特許権、商標権などの知的財産権は、企業にとって重要な「収益源」となり得ます。これらの権利を他社にライセンス供与することで、ロイヤリティ収入を得ることができます。また、知的財産権は、企業の「資産」として評価され、投資家やパートナーシップを引き寄せる要因にもなります。

あれもこれも、「知的財産権」の事件だった!
過去に話題になったニュースのなかには、知的財産権が関係する注目すべき判例がいくつかあります。知的財産権の重要性とその影響力を理解するうえで、好例といえる判例をいくつか紹介します。

<王将の商標権侵害>
株式会社王将フードサービスが、「自社の商標を侵害された」として提訴したケースが話題となりました。王将は「餃子の王将」という商標を持ち、そのブランド力を守るために商標権を積極的に行使しています。この訴訟では、他社が類似の名称を使用していることが問題となり、王将のブランド価値を守るために法的措置が取られました。この判例は、商標権がブランド保護にどれだけ重要かを示しています。

<シャネルの不正競争>
シャネルが、他社による模倣品の販売を防ぐために「不正競争防止法」を活用したケースも注目されました。シャネルは、高級ブランドとしての地位を守るために、模倣品や偽ブランド品の販売に対して厳しい対応を取っています。この判例は、ブランド価値を守るための法的手段がどれだけ効果的かを示しています。

<ヤクルトの立体商標>
ヤクルトが、独自のボトルデザインを立体商標として登録し、そのデザインを保護したケースも注目されました。この立体商標は、ヤクルトのブランド認知度を高め、他社が同様のデザインを模倣することを防ぎます。この判例は、意匠権や立体商標の重要性を示しています。

知的財産権をビジネス戦略の武器にしよう
知的財産権は、現代のビジネス環境において不可欠な要素です。企業が競争力を維持し、ブランド価値を守り、収益を最大化するためには、知的財産権の理解と活用が欠かせません。最近の判例を通じても、知的財産権が企業に与える影響の大きさを理解することができます。

知的財産権は、単なる法的保護手段ではなく、企業戦略の一部として活用するべきです。知的財産権を適切に管理し、守ることで、企業は長期的な成功を収めることができます。知的財産権の重要性を再認識し、みなさんの会社の知財戦略についても、一度考えてみると、今後のビジネスに活かせる「気づき」があるかもしれません。


著者:鈴木健二郎
株式会社テックコンシリエ 代表取締役/知財ビジネスプロデューサー

編集:株式会社幻冬舎ゴールドオンライン
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